トイレの数まで注意?労働安全衛生法とは

第33回のコラム「知っておきたいオフィスレイアウトにまつわる法律」で、オフィスレイアウトが法律と密接に関連していることをご紹介しました。しかし労働安全衛生法については、その重要性にもかかわらず意外に知られていないようです。休養室の設置からトイレの個室の数まで幅広く定める同法についてご説明します。

労働安全衛生法はもともと労働基準法と一体だった

労働安全衛生法はもともと労働基準法に定められていた内容を独立させ、かつ拡充して成立した法律です。労働基準法がもっぱら労働条件の最低基準を罰則等により強制するものであるのに対して、労働安全衛生法は単に労働安全の最低基準を確保するだけでなく、進んで快適な職場環境を実現することも目指しています。

労働安全衛生法に違反しても直ちに罰を受けることはありませんが、行政から指導を受けても改善が見られない場合には罰則が適用されることがあります。何より従業員の安全や健康に直結する問題ですので、しっかり同法を遵守することが重要です。

心身の疲労の回復を図るための施設の設置が義務

現在もっとも多いワークスタイルの人を例にすると、生活時間のおよそ3分の1を職場で過ごしているとされています。オフィスは生活の場の一部となり、必然的に疲労がたまったり体調が悪くなったりします。そんな時に必要となるのが心身の疲労の回復を図るための施設です。労働安全衛生法に基づき定められた労働安全衛生規則はそうした施設について定めています。

横になって休むことができる「休養室」が男女別に必要

労働安全衛生規則の第618条には「事業者は、常時50人以上または30人以上の労働者を使用するときは、労働者が横たわることのできる休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」との定めがあります。

もし人数の条件に達しているにもかかわらず休養室を設けていないオフィスは、速やかにオフィスの一角をカーテンやパーティションで区切り、横たわれるソファーを置くなどしてスペースを確保しましょう。

ただし経営上の理由等でどうしても休養室を常設することができない場合には、会議室兼休養室を設けて体調不良等の従業員が出た際には、直ちに(会議を中止してでも)休養室に転用することができるように、予め運用ルールを定めておく必要があります。

「休養室」と「休憩設備」は違う?休憩設備の設置は努力義務

休養室と似て非なる概念として「休憩設備」があります。労働安全衛生規則の第613条に定めがありますが、設置は努力義務にとどまっています。休憩スペースがあると自席で休んでいて電話を取ったり仕事を振られたりすることがなくなるため、従業員は気兼ねなく休憩を取りやすくなります。

トイレの数が少ないと労働安全衛生法違反になる

トイレの個室が男性75人に1つの割合になっており混雑に悩まされている企業が、IoTを活用して個室の空き状況をWebで閲覧できるようにしたというニュースが一部で話題になりました。ところがこの画期的な取り組みに対して、「むしろそんな混雑状況は法律違反なのでは?」という、ごもっともな意見が飛び交いました。

労働安全衛生法に基づき定められた事務所衛生基準規則の第17条には「事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない」とあり、同条第2号は「男性用大便所の個室の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること」と規定しています。つまり前出の企業は同法違反の疑いが濃厚だったわけです。同条は他にも、男性用と女性用を区別することや、女性用便所の個室の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすることなどを定めています。

驚かれた方も多いかもしれませんが、こういったことがないがしろにされている職場環境は、本当にあるのです。従業員の満足度を上げることが作業効率のアップにもつながるので、従業員増加によるオフィス移転の際には、こんなところにも注目してみてください。