ちょっとした工夫でできるオフィスの地震対策(前編)

オフィスの地震対策は喫緊の課題

2011年3月11日に発生した東日本大震災は死者1万5894人、行方不明者2562人となり(※1)、阪神・淡路大震災を大きく上回る被害となりました。そして、首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模な地震の発生が迫っているといわれる今日、日本では住まいのみならずオフィスの地震対策も喫緊の課題となっています。そこで本コラムと次回(第37回)の2回連続で、地震対策の工夫を取り上げます。

※1:警察庁まとめ。2016年2月末日時点のもの。

家具類は地震の際に人命を奪いかねない

オフィスの地震対策において特に重要なのは、建物や家具類の下敷きになるのを防ぐことです。阪神・淡路大震災における主な死亡原因は、建物の倒壊と家具類の転倒などによる圧死、窒息死でした。また東日本大震災の際に、東京は震源から遠く離れていたにもかかわらず、東京消防庁管内の事業所うちの22%で家具類の転倒や落下、移動が起きました(※2)。
家具類の転倒や落下、移動を防ぐことは、生命を守るだけでなく、オフィスを整然と保ったり、業務再開を効率化したりすることにもつながります。また、しっかりとスペースを確保することで地震が起きた際に従業員がオフィスに待機することができ、帰宅困難者にならずにすむメリットもあります。

※2:東京消防庁『家具類の転倒・落下にかかるアンケート調査結果について』より。

家具類の落下、転倒、移動を防ぐ3つの対策

オフィスの地震対策として真っ先に取り組むべきなのは、家具類から身を守ることです。落下、転倒、移動を防止するための主な対策としては、

1.オフィスレイアウトを工夫する
2.家具類をしっかり固定する
3.地震対策に役立つ家具類を選ぶ

といったことが挙げられます。順に見ていきましょう。

1 オフィスレイアウトを工夫する

オフィスレイアウトを工夫する際のポイントは次の通りです(※3)。

  • ・使い勝手よりも避難経路の確保を優先して家具類の配置をする。
  • ・家具類を間仕切り壁代わりに使用しない。
  • ・執務スペースのデスク周辺に背の高い家具を置かない。
  • ・メインとなる避難通路は直線状にし、幅1.2メートル以上を確保しておく。
  • ・避難通路、出入り口周辺に転倒、移動しやすい家具類を置かない。
  • ・安定感に欠けるローパーティションは、T字型やH字型のレイアウトにして固定する。

※3:東京消防庁『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック 平成27年度版』をもとに作成。

2 家具類をしっかり固定する

家具類をしっかり固定する際のポイントは次の通りです。

  • ・強度が高いL字型金具を使い、壁の桟(さん)と家具類の桟を固定する。
  • ・L字型金具を使いにくいオフィスでは、家具類と天井との隙間に入れるポール式器具と家具類の下に入れるマット式ストッパー器具を併用する。
  • ・引き出しストッパーや開き戸ストッパーを設置する。
  • ・二段式の家具類の場合、上下を固定する。
  • ・机と机を連結し、大きな塊として床に固定する。袖机も固定する。
  • ・複合機やコピー機などはキャスター部分にストッパーを取り付ける。

なお金具を使って固定する場合、壁の強度などによっては、別途補強工事が必要になることがあります。

3 地震対策に役立つ家具類を選ぶ

地震対策に役立つ家具類を選ぶポイントは次の通りです。

  • ・普及が進んでいる耐震・免震機能付きの家具類を探す。
  • ・飛散防止フィルムが貼ってあるものや強化ガラスを使っている家具類。
  • ・扉や引き出しにラッチ機構が付いている書庫。
  • ・一つずつしか引き出しを開けられないといった安全機能が付いている家具。
  • ・上下または左右にしっかり連結できる仕組みがあらかじめ備わっている収納棚。

日頃の運用でカバーできることもたくさんある

この他にも費用をまったくかけずに日頃の運用でできる地震対策がいろいろあります。主なものをご紹介します。

  • ・避難路を確保できるように、普段からオフィスの整理整頓を徹底する。
  • ・キャビネットの上など高いところに物を置かない。
  • ・すぐに身を隠せるように、机の下に物を置かない。
  • ・ヘルメットを常に手の届く位置に置く。
  • ・フリーアドレスや文書の電子化などを進め、収納のための家具類そのものを減らす。
  • ・避難場所などへ誘導するリーダー、副リーダーをあらかじめ決めておく。